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院長コラム

Vol.150 帰っていった酔っぱらいへ

 12月は急性アルコール中毒で救急搬送される人が一年で一番多い月です。吐物を撒き散らしながら、訳の分からぬことを叫ぶ患者もいるので、私のような未熟者は仕事をする気力が萎えてしまいます。付き添い人も酔っ払っているので、騒がしいだけで役に立ちません。軽症と高をくくると、実は他の病気による緊急事態ということもあるので、露骨に手を抜くわけにもいきません。とにかく疲れるのです。

 救急隊員は3〜4人が出動し、病院では事務員・外来看護師・検査技師・医師が迎えます。入院すると、数人の病棟看護師が部屋とベッドを準備し、カルテを記載し、看護計画を立てます。人員の手薄な夜勤帯では、本来の業務が後回しになることもあり、勤務時間終了後に仕事が残ります。一人の酔っぱらいが入院すると重症でなくても、十人近くの医療従事者が関わり、翌日には何事もなかったように退院する姿を見送っています。

 平成28年に東京消防庁管内で急性アルコール中毒で搬送された人は、約一万六千人で、過去5年間は毎年千人ずつ増加しています。年齢は二十歳代が四割以上を占め、どの年代も男性優位ですが、二十歳代では女性が四割も占めます。人口割合で考えると、全国では十五万人以上が、山形県では千五百人くらいが、救急搬送されていることになります。

 若者は脳がアルコールに慣れておらず、安全な飲み方を知らないので、中毒になりやすいと考えられています。血液中のアルコール濃度が上がりやすい人は中毒になりやすく、小柄な人・女性・赤型の人(飲酒するとすぐに赤くなる人でアルコールを分解する酵素の活性が低い人)が危険です。遺伝的にアルコールを分解する能力が低い人は、白人や黒人にはほとんどいませんが、日本人や中国人は半数近くいます。このような若者が一気飲みをすると命を落とすことになるのです。分解速度が遅いと、急性の中毒だけでなく、肝臓や脳などの臓器障害を起こしやすく、将来依存症にもなりやすいのです。慢性の障害まで含めると飲酒による経済損失は、厚労省の見積もりでは年間数兆円レベルと言われ、喫煙に匹敵します。

 私も含めて人は愚かな行いをする生き物です。急性アルコール中毒で命を落とすことはもちろん、医療資源の無駄遣いを減らす方法はないのでしょうか。飲酒運転の減少は、厳罰化や失職などの社会的制裁の強化がもたらしたと考えられています。私は急性アルコール中毒に要した医療費は全額自己負担にすべきだと思います。健康被害が軽減でき、救急搬送が減り、保険診療のありがたさも分かるのではないでしょうか。

院長 笹壁弘嗣

新庄朝日第827号 平成29年12月15日(金) 掲載

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