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院長コラム

Vol.145 これも一種のドーピング?

 先日夏風邪をひきました。少し熱っぽくて身体がだるい程度なので、仕事を含めた日常生活は可能ですが、喉が痛くてモノが飲み込めません。水も苦しくて食事はゼリー、夜もあまり眠れず、2日目には身体もふらついてきました。首にはリンパ腺と思われるしこりがいくつか腫れていますが、喉の奥が化膿している様子はありません。要するに単純なウィルス感染なので放っておけば治るのですが、あいにくその日は当直でした。朝一番に受診した耳鼻科医も同じ意見で、喉の奥の腫れているところを薬で焼いてもらいましたが、夕方になっても症状がよくならないので、もう一度相談して、ステロイド剤を処方してもらいました。

 ステロイド剤は、副腎皮質という臓器で作られるホルモンを人工的に合成したもので、炎症を強力に抑える作用があります。他にもアレルギーや免疫疾患、悪性腫瘍の治療にも用いられます。作用が強いということは副作用も強いので、注意を要する薬です。患者さんに処方したことは数知れませんが、自分では使ったことはありません。夕方にその薬を飲んだところ、2〜3時間すると身体が暖かくなり、何となく元気が出て、朝からふらついていた身体がシャキッとしてきました。夜になると痛みが和らいだような、前々日と前日に解熱鎮痛剤を飲んだ時には感じなかったことです。深夜になると、痛みは半減し、水が楽に飲めるようになりました。当直の仕事も無事に終わり、翌朝には食事も普段通りにでき、翌日の仕事もいつも通りに済ませることができました。薬を飲んで24時間後には痛みもほぼ消失しました。

 症状が良くなったことがすべて薬のおかげではないでしょう。飲み始めた時には炎症がすでにピークを超えていた可能性は高く、私自身がこの薬は効くと思いこんでいるプラセボ効果も見逃せません。ただ、想像以上に効いたというのが正直な感想で、三日間使う予定でしたが一回で終了しました。

 この薬はスポーツ界ではドーピングの対象薬物に指定されており、競技会時の検査で検出されると失格になります。一度の経験ですが、元気ハツラツ感があるだけでなく、性格がいつもより攻撃的になったようにも感じました。スポーツや戦争で使うと効果がありそうです。黙って寝ていれば治るものを、薬の力を借りて仕事をするというのはある意味ドーピングかもしれません。要した薬価は30円弱で、もちろん保険適用の治療です。よく効く薬ですが、ある意味怖い薬でもあります。薬は必要なものだけを適切に使用することが大事だと改めて感じました。

院長 笹壁弘嗣

新庄朝日第817号 平成29年7月15日(土) 掲載

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