新庄・最上地域の医療拠点として地域の皆様のお役に立ちたい

ホーム > 院長コラム > Vol.138 医学部へ進学した偏差値秀才の未来

院長コラム

Vol.138 医学部へ進学した偏差値秀才の未来

 将来の医療を担う中心は看護師だと先月号で予想しましたが、今回は医者の未来を予測します。人口減少と高齢化が進んでも、医学は進歩し続けますが、医療費抑制のために、最先端医療の提供は制限される一方で効率は重視されます。そのため従事する医師数は制限されます。あぶれた医者を待っているのは、高齢者を如何にして穏やかに死なせるかという分野ですが、そこには看護師を始めとして医師以外の医療職が進出しています。結局、高度先進医療を行う医者が少しと、他の医療職のまとめ役ができてなおかつ雑用を厭わない医者が相当数必要ですが、需要は今より減少します。

 もう一つ重要なのが人工知能の進歩です。当分は不可能とされていた将棋や囲碁の世界でも人間に勝るとも劣らないレベルに達した人工知能は、医療の分野にも導入され、肉体労働に留まらず、頭脳労働もかなり肩代わりするようになります。患者の訴えを上手くまとめる通訳がいれば、病歴を聴取して病気の絞り込みをすることは容易です。特殊な診察技術の習得は難しくても、聴診などのデジタル化が可能なものは、助手がいれば医者と同等以上にできます。検査結果を分析して考えられる病気を挙げることは人間を凌駕します。生身の医者と違って、思い込みがないので、無駄な検査も減るでしょう。診断がつくと、古今東西の文献から治療方針を幾つか選び出せます。人工知能が人間よりも感じのよい対応をするようになり、患者との感情的なトラブルも減るでしょう。より少ない医者で診療レベルは維持できるようになります。
 
 現在は偏差値の高い学生から順に医学部に行く時代だそうです。将来の経済的安定を優先して職業を選ぶことは間違っていないと思いますが、今の若者が中堅医師になる頃には医療も様変わりしている可能性が高いと思います。かつての花形職が落ちぶれてしまうことは珍しくありません。医者や弁護士の価値も下がり、ワーキングプアに陥る可能性さえあります。

 高齢者を穏やかに死なせる医療は、重要でやりがいもありますが、今の医師像とはかなり異なるものです。かなり泥臭い仕事の連続と思ったほうがよいでしょう。そのような場に身を置く覚悟がない若者が医者になると、こんなはずじゃなかったということになりますが、そんな医者に命を委ねる患者は災難です。どちらにとっても不幸なことです。医療職に限らず、将来も必要とされるのは、時代の変化に対応できる能力を持ち、自分の資格以上の仕事ができ、なおかつ機械に取って代わられにくいことができる人材です。

院長 笹壁弘嗣

新庄朝日第805号 平成29年1月15日(日) 掲載

・過去に新庄朝日等に掲載されたコラムがご覧いただけます。