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院長コラム

Vol.110 たかがSTAP細胞のために…

 自殺者まで出したSTAP細胞騒動ですが、メディアで批判している人も含めて、STAP細胞のことを理解できる人がどれほどいるでしょうか。私も以下のことくらいしか分かりません。「再生医療の分野で、ES細胞とiPS細胞に続くもの。前者が受精卵を扱うので倫理的な問題が生じやすいのに比べて、後者は体細胞を扱うことが斬新で、ノーベル賞を受賞した。STAP細胞は、体細胞を扱いながら、なおかつ遺伝子操作が不要なので脚光を浴びた。」

 体細胞が外部からの刺激でいろいろな細胞に分化するということは、これまでの常識を覆すものです。時代を変える大発見をする人は、教科書に書いてあることを否定するのですから、ある意味で身の程知らずです。その中の一握りが歴史に名を残し、大多数はただの身の程知らずで終わります。今回の騒動に関わった人たちがどちらに属するかは私には分かりません。ただ、社会がある一定数の身の程知らずの存在を許容しなければ、科学の進歩など望めません。

 今のところSTAP細胞の再現実験は成功していないようです。捏造かもしれませんが、ないと証明することは非常に難しいはずです。一度や二度の再現実験が失敗したからといって、その存在を否定することはできません。偶然が成功をもたらした例は科学史上珍しくないのです。このようなことは専門家が時間をかけてやるしかないのです。百年後には決着がついているかもしれない程度に考えるのが一般人のマナーです。

 今回の騒動の本質は、名誉欲や研究費獲得競争に加えて、特許権に伴う莫大な利益に、理化学研究所を中心とした科学界も蝕まれていることではないでしょうか。そうでなければ理研があのような科学と無縁な派手な演出をする理由がありません。メディアの反応も異常です。科学文化部があるNHKでさえ低俗な検証番組しか作れませんでした。初めはワイドショー的にヒロインを作り出し、その後は集団リンチを繰り広げました。

 医薬品でもデータの捏造は話題になりましたが、古くは万有引力の法則のニュートンや遺伝の法則のメンデルもデータに手を加えたのではという疑惑があるそうです。でも彼らの発見は正しいものとして受け入れられています。今回の関係者にできることは、真実を語ることです。誤りがあったのであればそれを認め、出直せばいいのです。彼らは罪を犯したわけではありません。優秀な頭脳がこのような騒動で失われるのは勿体ないことです。まして、たかがSTAP細胞のために命が失われるのはあまりにもバカげています。

院長 笹壁弘嗣

新庄朝日 第749号 平成26年9月15日(月) 掲載

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