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院長コラム

Vol.87 ディオバンは悪い薬ではないけれど

 去年1年間の医療用医薬品の売上は約9兆5千億円でした。その中で一千億円以上の売上を挙げているのは四品目あり、一位と二位が血圧を下げる薬(降圧剤)です。今話題のディオバンは二位で、一位も同じ系統であるアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)です。高血圧の治療において我が国ではARBが第一選択といってもよいほど多用されており、学会も推奨していますが、世界的には珍しい現象です。

 なぜこれほど我が国でARBが使われるようになったというと、他の降圧剤と比べて心臓病や脳卒中を40〜50%も減少させるという研究結果が出たからです。その2つの論文はどちらも日本で行われた大規模試験で、製薬会社の社員がこっそりとデータ解析に関わっていたことが判明して大騒ぎになりました。実は、一年以上前にこのデータは作為的であるという指摘があり、医者の間では話題になっていましたが、今回は一般紙にも掲載され、担当した大学教授が辞任したので、反響が大きくなりました。

 降圧剤の中でも新しいARBは、昔からある降圧利尿剤に比べると何倍も高価な薬です。世界的には心臓病や脳卒中を減らす効果は同等と考えられているので、値段の高いARBをはじめに使わなければならない理由はあまりありません。強いて言えば、今のところ副作用が少ないことでしょうか。

 これほど使われて大喜びなのは製薬会社です。もちろん製薬会社は営利企業なので、利益を上げることは悪いことではありません。現代では製薬業界もグローバル化が進み、生き残るための競争は激しいものがあります。新薬は巨額な開発費を使っているので、それを取り戻すためには、安価な古い薬より高価な新しい薬を熱心に売り込みます。グローバル化の先進国では更に顕著で、十年以上前に書かれた「ビッグ・ファーマ」という本によると、米国で製薬会社が一年間に使ったマーケティング費用は55億ドルにもなります。

 みなさんの中にもディオバンを飲んでいる人はいるでしょう。私も第一選択にはしていませんが処方しています。ディオバン自体は特に悪い薬ではないので、飲み続けたほうがよいと思います。少なくとも勝手にやめるのは危険です。ただもっと安い薬に変えてもらうように主治医に相談してみるのはよいかもしれません。降圧剤にかぎらず昔からある安価な薬を見直すと、医療費は一兆円くらいは抑えられるはずです。

院長 笹壁弘嗣

新庄朝日 第723号 平成25年8月15日(木) 掲載

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