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院長コラム

Vol.81 インフルエンザの集団感染を防ぐ方法

 日本全国でインフルエンザの感染者は毎年約一千万人に及び、流行に関連した死者は約一万人と推計されています。つまり、山形県内で百人、新庄最上地域で十人程度が毎年インフルエンザの流行によって命を落とすことになります。インフルエンザは子供ほど感染しやすいので、小学校から流行し始め、それが家庭で成人や高齢者に感染するのがよくあるパターンです。高齢者は感染しにくい反面、死亡率が高く、死亡者の八割が六十五歳以上です。

 通常の社会生活を続けながら集団感染を防ぐことは難しいというより、不可能です。感染者に対する登校基準は以前より厳しくなったようですが、他人に移す能力はあるけれど症状がない人を集団から排除できない以上、その効果は疑問です。(完治したという証明を病院に求めるのはさらに馬鹿げています。)職場には無理して出勤する人もいます。それが病院であれば抵抗力の落ちた高齢者がたくさんいます。また、面会者の中には体調が悪いのを承知で病院に来る人もいます。さらにインフルエンザが重症化した人は患者として入院します。つまり、病院ほど集団感染を防ぎにくく、死亡者が出やすい場所はないのです。

 ほとんどの病院には「感染対策委員会」があり、マニュアルに沿って対策を立てています。職員へのワクチン接種・感染者の隔離はもちろんのこと、面会制限や抗ウイルス薬の予防投与も積極的に行なっています。にもかかわらず、これだけ集団感染が起こるのです。抗ウイルス薬の予防投与も本当に費用対効果があるかは不明で、数年後には廃れているかもしれません。

 集団感染が起こればメディアが声高に責任を追求し、病院は謝罪会見を行うという図式は現代日本を象徴する光景です。病院への出入りは最小限にし、最悪の場合は死亡することもあるという現実を受け入れるのが成熟した大人の態度です。学校も行政も病院も、自分の責任を逃れるために対策を立てているというのは言い過ぎでしょうか。癌は早期発見せずに末期にまで放置するのが一番と主張する近藤誠先生は、医者の間では余り評判がよくありませんが、さきごろ菊池寛賞を受賞しました。彼はその著書で、「インフルエンザを予防する唯一の方法は、流行時に人混みに出ないこと。普通に社会生活を送っていたら、感染は防げないので、むしろインフルエンザにかかって免疫をつけると、その後かかりにくくなる」と述べています。

院長 笹壁弘嗣

新庄朝日 第711号 平成25年2月15日(金) 掲載

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