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院長コラム

Vol.76 私もガーゼを忘れたことがあります

 8月23日付けの新聞各紙に「手術ミスで体内にガーゼ、山形県立病院、公表せず」という記事が出ました。詳細不明なので、この事故について論評することは控えますが、一般論としてガーゼを忘れるようなことがなぜ起こるのかをお話しします。

 お腹の中は構造が複雑で、血液などを吸い込んだ小さなガーゼの塊が紛れ込むような小さなスペースは無数に存在します。手術の際にはガーゼカウントー開始時と終了時の数が合っているかを確認する作業ーを行っている病院が多いと思いますが、時には百枚を越すガーゼを正確に数えられる保証はありません。そもそも初めに出したガーゼの数が間違っていることもありえます。そのため、カウントが合わなくてもガーゼが残っていない場合もあれば、ガーゼが残っているにもかかわらずカウントは合ってしまうこともあります。実際今回の事例もカウントは合っていました。つまり、この作業は労力に見合うほど有効な予防策にはならないのです。

 手術に使うガーゼにはX線造影糸が入っているので、レントゲンを撮れば残っているガーゼは多くの場合見つかりますが、撮影範囲外にあれば残ってしまいます。手術室でレントゲンを撮るのは、大きな手間ではありませんが、病院の体制にもよるので全例にできるとは限りません。ほとんどの場合は不必要な検査なので、被爆や医療費の問題もあります。いずれにせよガーゼのトラブルを減らす方法はあっても、ゼロにする方法はないのです。そしてリスクを減らすためには、人手もお金もかかるのです。

 私が強調したいのは、ガーゼのトラブルは、術者が怠慢でなくても病院の質が悪くなくても起こりえるということです。今回は手術直後にレントゲンで見つかりそれを取り出したので、あまり騒ぎだてするような事例ではないように思います。実は私も20年以上前、胆嚢炎の緊急手術でガーゼを忘れたことがあります。数日後にレントゲンで見つかり、患者さんとご家族にお詫びして取り出したことがあります。 誤解を恐れずに言うと、手術というのは様々なリスクがあり、その全てを一般の方が医療者と同等に理解することは不可能なのです。今回の記事は、医療側の不正を追及することで医療をよくしようと意図しているのでしょうが、実は無用な不信感を助長し、信頼関係を築きにくくするだけと言うのは、ガーゼを忘れたことのある藪医者の戯言でしょうか。

院長 笹壁弘嗣

新庄朝日 第701号 平成24年9月15日(土) 掲載

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