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院長コラム

Vol.50 この夏お薦めの一冊

 日本人はどれくらい牛を食べているのでしょうか。2004年のデータでは130万頭弱だそうです。家畜を殺して肉や皮革を得ることを屠殺(とさつ)と呼んでいましたが、「屠(ほふる)」という文字が常用漢字でないことと、「屠殺」という言葉が差別用語とみなされることがあり、最近では「と蓄」と表されています。

 森達也著「いのちの食べ方」という、2004年に理論社から発行された本があります。対話形式で書かれ、漢字にはルビが振られているので、小学生高学年には十分読めます。この中に、と蓄の過程が書かれていて、大変勉強になります。

 食用のため薬殺はできず、出血死させるのですが、ポイントが2つあります。1つは苦痛をなるべく与えないこと、もう1つは生きているうちにすばやく血を抜くことです。身体を洗われた牛は、長さ3cmの細い針で眉間を打ち抜かれ、脳しんとうを起こします。その穴からワイヤーをさし込み、脊髄を破壊し、頚動脈を切り、逆さ吊りの状態で放血させます(ここまでわずか数十秒)。その後は、頭・前脚・後脚を切断し、皮を剥ぎます。さらに、腹を切り内臓を取り出し、電動ノコギリで背骨に沿って縦に2つに割り、湯で洗浄します。検査を受け、問題がなければ枝肉となります。皮や骨や内臓は専門業者に引き取られ、棄てるところはほとんどありません。豚も、初めに炭酸ガスで仮死状態にされる以外は同様です。

 肉は食べないという方がいるかもしれませんが、様々の食品にエキスとして含まれています。また、薬のカプセルの原料にもなり、さらに革製品を身につけていないのではないでしょうか。これほど身近なものが、どこでどのようにしてどんな人たちによって作られるのかを我々は意識して忘れようとしています。牛肉と言えばパックされたもの、牛と言えば牧場で草を食べているもの、その中間はないものとして知ろうとしません。

 と蓄場を造ろうとすれば、必ずと言っていいほど反対運動が起こります。そこで働く人たちへの差別などについても、この本は取り上げています。子供にはもちろん、大人にも是非読んでもらいたい内容です。田植えと稲刈りのまねごとを食育と勘違いしている人には特にお勧めです。修学旅行でディズニーランドへ行くよりは、と蓄場に見学にいく方がいいと思うのですが、そんなことは誰も認めてくれませんよね。

院長 笹壁弘嗣

新庄朝日 第651号 平成22年8月15日(日) 掲載

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